「魁? どうかしたのか?」
立ち止まってしまった俺に気付いた父さんが、踵を返して戻ってくる。
「あ、うん……」
父さんの問い掛けに、視線を逸らす事無く曖昧に返事をした俺は彼女の周囲へと視線を走らせるが……
彼女の周りにさっきの男の姿は無く、目の前に立っている中年の男は、威圧するように彼女を睨んでいて傍から見ても様子がおかしい。
「……父さん、ちょっと手伝って!」
父さんの手首を強引に引いて、足早に彼女の背後から近付いて行く。
「お、おいおい。一体、何を手伝うって言うんだ?」
俺の行動に少し驚きながらも声をかけて来るから
「……人助け」
「人助け?」
俺の返事に、向かっている先へと視線を移した父さんは状況を把握したのか「あぁ、あれか……」と呟いた。
掴んでいた父さんの手首を離して歩いていれば
───何だ、これ……
彼女に近づくにつれて、ドクンドクンと心臓が忙しなく動き出す。


