マーク兄さんの言葉に、指先から血の気が引いていく。


「あぁ。修も仕事が忙しくて、家にいないんだよ」


固まってしまった私の背中をそっと押して、リムジンに乗せたマーク兄さん。

ドアを開けていたSPに目配せをすると、静かに閉じられた車内は静寂に包まれる。


ゆっくりと走り出したリムジンの窓から外に視線を向ければ、まだ帰っていなかった葵さんがこっちを見ていた。

フルスモークの窓から車内は見えないだろうけど、此処まで送り届けてくれた葵さんと重盛さんに小さくお辞儀する。


きっと、年が明けて新学期が始まる直前までは、日本に帰れない筈。


あの場所に帰るのだと思うと、心が凍りついていく。

冷たくなった手を握り締めて、小さく息を吐いた。


こうして、突如現れたマーク兄さんと共に、私は日本を後にした───









                 ~Wonderful DaysⅠ~




                      【完】






                  To be continued……