声を掛ける前に、スマホを耳に当てた綾ちゃん。
「…もしもし、私。ちょっと、聞きたい事があるんだけど」
話をきいているのも悪いと思って、近くのお店に視線を巡らせていれば
「え? 今? SOGOだけど……は? 別に来なくていいわよ! ちょっ、おいっ!」
珍しく、慌てる綾ちゃんの声が聞こえる。
真っ暗になったスマホの画面を、呆然と見つめる綾ちゃん。
「……あ、綾ちゃん?」
「え? あ……ごめん、大声出しちゃって」
「だ、大丈夫?」
様子のおかしい綾ちゃんに声を掛ければ
「全っ然、大丈夫じゃないわ!」
青褪めていく顔色。
辺りをきょろきょろと見渡して、落ち着かない綾ちゃんが心配になってきた。
「綾ちゃん?」
「マリア。取り敢えず、逃げるわよ!」
「え? 逃げる?」
……って、誰から?
「早く逃げないと、ヤツが来ちゃ……」
話の途中で不自然に途切れた言葉。
綾ちゃんを見れば、ある方向を見たまま目を見開いてフリーズしていた。
その視線の先を追っていけば……
「誰から逃げるって?」
そこには、仏頂面でこっちを見ている蓮さんと、面白そうに笑っている葵さんが立っていた。


