執事さんの説明に「あぁ、そっか……」と納得する。
私、先輩に突き落とされたんだっけ。
「随分と、派手に転ばれたのですね? 医師の話だと、体中、痣だらけだったとか……」
銀縁のメガネの奥から執事さんの突き刺さるような視線を向けられて、見えていた腕の痣を隠すようにシーツの中に手を戻した。
今迄の休暇で祖母の邸宅に戻っていた時は、兄達よりも先に私が戻っている事が多く、屋敷の中では変わらず私の存在がないかのように時が流れていく。
お婆様達が私の存在を好んでいない事はわかっていたから、スクールで受けている虐めの事は伝えていなかった。
たとえ伝えたとしても、現状が変わるとはとても思えなかったから。
───此処に置いてもらっているんだから、これ以上、迷惑を掛けないようにしなきゃ……
固く口を閉ざしていた私は、兄さん達が戻って来ても虐められている事を言えなくて、なんとか陽気に振舞って取り繕っていたから、私が虐められている事は知らない筈。
「さぁ、処置は終わっておりますので屋敷に戻りますよ」
「え……スクールに戻るんじゃないんですか?」
執事さんの言葉に疑問を投げ掛ける。
だって、まだ夏休みに入ってないから、ハウスに戻るのだとばかり思っていた。


