───この人、日本語喋れたの?!
お婆様のお屋敷にお世話になってから何度も顔を合わせていたけれど、日本語はおろか声を聞いた事も無かった。
「スクールでは英語力が必須ですので、マリア様には他の生徒とは別に英語の教師をつけております。
一日も早くマスターして、スクールの方達と交流される事をお勧め致します」
「はい……」
執事さんの流暢な日本語に懐かしさを覚えてしまって、その後の「交流を持って下さる方がいらっしゃれば良いのですが……」という言葉は耳に入ってこなかった。
「……では、参りましょう」と歩き出した執事さんの後に続いて行けば、擦れ違う男子生徒が視界に映る。
男子の制服は金ボタンのブレザーにネクタイ。
都会では浮きそうな古風な制服も、赤レンガの街並みにはしっくりと馴染んでいた。
広大な敷地に建つ校舎で、約800人の生徒が学ぶこのスクールはイギリスの名門らしく、ハウスと呼ばれる寄宿舎が16もある。
その中の1つに入った私は、ハウス・マスターと呼ばれる同じ寮内で暮らし、昼夜を問わず生徒達の面倒を見る先生に案内されて、これから生活をする部屋へと向かった。
連れられて行ったそこは、下級生ということで他の生徒5人との相部屋。
先生からの紹介を済ませて部屋でゆっくり出来るのかと思っていたのに、直ぐに他の部屋に移動して早速、英語の勉強がスパルタで始まった。
そこでは、右も左もわからない私の為にパブリックスクールの事やイギリスの事もあわせて教えてくれる。


