あいつでも、あんな顔するのか……ってくらい男の俺でも見惚れる程の笑顔を見せた魁。
それを呆然と見ていたのは、俺だけだったらしく
「ねぇ、響君? 俺の弟って、魁君だよね?」
隣の慧に視線を移せば、困惑気味の表情で訳のわからない質問をしてくる。
「は?」
だから、思わず眉間に縦皺が寄ってしまったのは仕方がない。
───何言ってんだ? コイツ……
「ねぇ、響君。魁君は、いつから『ゆう君』になっちゃったんだろう?」
本気で悩んでいる慧に
「俺が知るわけないだろ」
さっき返された言葉を、そのまま返す。
何がどうなってるのかは、わからないが……
その表情と会話から、魁=『ゆう君』というのは間違いない。
それよりも……
「おい、慧。行くぞ」
「え? 何処に?」
「取り敢えず、部屋の外」
「え? 何で?」
この空気を読めない慧を引き摺って、部屋の外へと出る。
「俺はまだ、馬に蹴られて死にたくない」
「えぇ~?! いいところだったのにぃ……」
口を尖らせて文句を言う慧を無視して歩き出した俺。
背後で扉が閉まる音と一緒に聞こえたシャッター音は聞かなかったことにしよう……


