……驚いた。


魁にハーフの婚約者がいるのは知っていたが、イギリスに住んでいるんじゃなかったのか?

それに、高校を卒業するまでは会えないって言ってたよなぁ?


「───響?」


「あぁ、悪い……」


疑問だらけだったが、具合の悪い婚約者を診る方が先決だ。

さっきまで座っていたソファーへと促し、包まっていたコートを開けばガタガタと震えている彼女。


「───いつからだ?」


「気が付いたのは40分前くらいだ」


「咳や鼻水は?」


「……ない」


魁から簡単な問診をして、自分の鞄を開く。

体温計と聴診器、検査キットを取り出し、熱を測りながら心音を聞く。

ピピピッと鳴ったそれを引き抜けば


「39.8℃か……」


この体温で、この震え……

それは、まだまだ体温が上昇する事を暗に示していた。

咳も鼻水もなくて、この発熱。

用意した検査キットで検査をすれば、案の定


「インフルエンザだな」


最近、流行り始めていたインフルエンザだった。