あまりの痛さに、涙目で先生を睨めば


「ごめんね? インフルエンザの検査方法ってこれしかないんだ」


ずるりと引き抜いた綿棒を何かの液体に入れて答えた先生は、申し訳なさそうに謝るけれど……

鼻の穴に綿棒を豪快に差し込まれた姿を、好きな人に見られるなんて恥ずかしくて仕方がない。

魁さんを直視出来なくて、先生の方を見ていれば


「インフルエンザの検査って、そんなに何回もするものなのか?」


後ろから聞こえた、先生に質問する声。


「彼女の場合は、熱を出してから3日経ってるのになかなか下がってこないから、ちょっとな……」


それに対して、含みのある言い方をされて不安になる。


「ちょっと…って何だよ」


「んー、もう少し待て。検査の結果が出てくるから…っと……やっぱりか」


手にした白くて四角い何かを見た先生が呟いた。


「やっぱり?」


「彼女、インフルエンザだよ」


「あ? そんな事はとっくにわかってるだろうが」


既にわかっている病名に、苛立たしげに先生を見る魁さん。


「あぁ…彼女が先にかかっていたのはA型インフルエンザ。で…検査の結果、新たにかかったのがB型インフルエンザね」


それを気にする事無く、話を続ける先生に


「あの…同じインフルエンザじゃないんですか?」


疑問を口にすれば


「同じインフルエンザでも、A型とB型のウィルスは全くの別物だ。同時にかかるのは珍しいけどね……」


苦笑いの先生。

そして、先生の言ったとおり新たなインフルエンザに罹った私は、更に4日間魁さんの家にお世話になったのだった。