───あ…目が合っちゃった……
「プライベートな交流を深める事は、有らぬ噂を立てられてしまうので遠慮しておきますよ。
息子達には、既に決まったお相手がいるのでね」
「それは……既に、ご婚約されているという事ですかな?」
続いている会話を耳にする余裕も無かった私は、同じように動きを止めた暁さんと視線を合わせたまま、どうすれば良いのかと思考を巡らせていた。
けれど、高熱でボーっとしている私の頭では、まともな答えが出るはずも無く……
取り敢えず、逃げる事しか頭になかった。
そろりと後退りをして、あと少しで逃げられると思った時
「ん? 月、どうかしたか?」
様子がおかしい事に気づいたお父様が声をかけたけれど、その呼びかけにも反応しなかった暁さんは無言で私を見ていて。
お父様が、暁さんの視線の先を追って私を見た。
“早く逃げなきゃ……”
そう思っていても、暁さんのお父様にまで見つかってしまったという緊張感からか、足は硬直してしまって手をついていた壁に体を預けて立っているので精一杯。
その間にも、魁さんのお兄さんや先生もつられて振り向いていて、魁さんのお父様までもが振り向いた時……
“どくん”
心臓が痛いほどに大きな音を立てた。


