必死に名前を叫べば


「──…マリア……」


優しく届いた声に、涙が出そうになる。


「魁っ……」


「マリア……」


もう一度聞こえてきた大好きな人の声と、頬を滑る指の感触に安心感を覚えて、強張っていた体の力がフッと抜けた。

気がつけば、今まで私の手首を掴んでいた筈の男の姿も無く、周りの景色は再び真っ暗になっていた。


だけど……さっきまでの不安感や恐怖感は一切無くて。

私の名前を呼んでくれる優しい声と、頬に伝わる温もりに導かれるように、私の意識はゆっくりと浮上する。






───熱い……


暗闇の中で最初に感じたのは、自分の体の熱さ。

目の奥も、口から毀れる吐息でさえも熱くて息苦しい。


「……マリア…?」


耳元で囁かれた声に、私の体がピクリと反応する。

どうしても声の主の顔が見たくて、重い瞼を懸命に持ち上げれば……


薄らと差し込んできた光に眩しさを覚えて再び瞼を閉じると、溜まっていた涙が蟀谷に零れ落ちていく。