気がつけば、暗闇の中心で蹲っていた私。


───あれ? 私、こんな所で何してるんだっけ?


自分が何をしていたかも思い出せず、周りに視線を巡らせても、何処までも真っ暗で何も見えない。


「……此処、どこ?」


人の気配すらなくて、少し怖くなってしまう。

取り敢えず立ち上がって、誰か人を探そうと一歩足を踏み出してみると───


あんなに真っ暗だった視界が、一気に開けて見慣れた景色に変わる。


「……っ……」


思わず息を呑んでしまったのは、そこは二度と足を踏み入れたくないと思っていた場所だったから。


「……何で……」


そして目の前には、私の記憶から抹殺したいと思うほどの人物が立っていた。


「よぉ……」


鼓膜に響く耳障りな声と、ねっとりと絡みつくような視線に背筋が凍りつく。


「俺から逃げれると思うなよ? クックッ……」


喉の奥で笑いながら私の腕を掴んだ男。


「……嫌っ!!」


いつもなら、触れられた瞬間に体が反応するのに、今の体は鉛のように重くて指一本動かす事が出来なかった。


───嫌だ嫌だ嫌だっ!!! 私に触らないでっ!


掴まれた手首に鳥肌が立つ。

逃げたいのに逃げられない恐怖に、思わず助けを求めてしまう。


「───魁……さ……」