「家って……大丈夫なのかよ?」


耳に圧がかかったように遠くで聞こえる葵さんの声。

かなり慌てているようにも聞こえるけれど……


「下手にセキュリティーの弱い場所に連れて行くよりは安心だろ? 
それに今日は、あいつが家に居る筈だから病院に連れて行くより早い」


───あいつ…?


「あぁ……今日は響(ひびき)さんが居るのか……」


───“響さん”って誰?


初めて聞く名前の人。

葵さんも納得したのか、それ以上言葉を発しなかった。



それからは、沈黙が流れている車内。

聞こえてくるのは、荒くなってくる自分の呼吸音だけ。

熱が上がってきたせいなのか、目を開けているのも辛くて閉じていた。

時折、魁さんの左手が私の頬に触れて熱を確かめているのがわかる。


「もう少しで着くからな……」


意識が途切れる前に聞こえたのは、魁さんの心配そうな声だった。