それに頷いて足を止める事無く車に滑り込んだ二人は、直ぐに車内の異変に気づく。


「……待たせ過ぎたか……」


「あらら、マリアちゃん寝ちゃったね……」


反対側のドアに凭れるように眠っているマリアの姿に、魁は申し訳なさそうに眉尻を下げる。


ドアを開け、暖まっていた車内に冷気が入り込んだからか、体を丸めるマリア。


「寒いんじゃない?」


「…………」


葵の言葉に無言でコートを脱いだ魁はマリアにそっと掛けると、その感触にぴくりと反応を示したマリアは、指先に触れた温もりに擦り寄った。


「猫みたいだね、マリアちゃん」


「──…あぁ……」


目を細め優しい眼差しをマリアに向けると、掛けたコートごと右手で抱き寄せた魁。


「おやすみ、マリア……」


魁の囁きに僅かに笑みを見せたマリアからは、すぐに安らかな寝息が聞こえてきた。