Wonderful DaysⅠ



イギリスで田中さんに会った記憶はないし、彼自身、英語が話せないから住んではいなかったのかもしれないけど……


どっちにしても、田中さん本人に聞かなきゃわからない事で。


「……はぁ……」


それが怖くて出来ないなんて、自身の腑甲斐なさに情けなくて溜め息しか出てこない。


───取り敢えず、日本で元の姿に戻るのは止めよう……


これ以上、この姿で外を歩き回るのは危険な気がする。

少なくとも、田中さんが何者なのかわかるまでは大人しくしていた方がいい。

今、出来る対策なんて、そんな事くらいしか思いつかなかった……


もう、何度目かわからない溜め息を吐いて、右側のドアに寄り掛かると窓の外に視線を向けた。


バイクで溢れる道路側とは違って、視界に映ったのはライトアップされた結婚式場。

そこは、まるでフランスの王侯貴族の邸宅をイメージするような華やかな会場で、教会に続く30段以上ある階段の中央にはレッドカーペットのように電飾が伸びている。


───結婚式かぁ……