マリアの頭に触れた魁だったが、手に伝わる微かな震えに眉根を寄せる。


「──…マリア…もう少し待てるか?」


俯いて顔の見えないマリアに、優しく問い掛ける魁。


「……はい…」


それに頷いて答えるマリアを確認すると


「直ぐに戻るから待ってろ」


触れていた髪を撫でて名残惜しそうに離すと、インナーハンドルに手をかけてドアが開くと同時に外に出る。

閉じたドアへと数秒視線を流すが、フルスモークで覆われた車内の様子は窺えない。


小さく息を吐き、車内に残したマリアの先程の様子を思い返して手を握り締めた。


「──重盛……」


車の前方で待機していた重盛に声を掛けた魁。


「はい」


それに反応した重盛は、直ぐに魁の元へと足早に近づく。


「今度こそ車には誰も近づけるな」


「はい」


鋭い視線を重盛に向けると


「直ぐに戻る」


頭を下げる重盛から視線を外して歩き出すのと同時に、胸ポケットの中にあるスマホを取り出し、電話を掛ける。