Wonderful DaysⅠ



バタン…とドアが閉まる音と、パワーウィンドウのスイッチが押されたのは、ほぼ同時。

無意識にフルスモークの窓が上がっていくのをぼんやりと見ていれば


「──…田中…」


葵さんが田中さんを連れて、車を離れて行く。

窓が完全に閉じれば、外の音は完全にシャットダウンされて、車の中には魁さんから発せられているピリピリとした空気が張り詰めていた。

車内に沈黙が流れること数十秒……


「──…マリア」


俯いた私をずっと見ていた魁さんに名前を呼ばれて、手元のホットココアに向けていた視線を上げていく。


「……はい」


小さく返事をすれば、魁さんの瞳と視線が絡んで逸らせない。


「なんて顔してんだよ……」


「え?」


そっと、頬に添えられた大きな手にぴくりと肩が震える。