向かった先は、10メートルほど先に止まっていた漆黒の高級車の前。
左ハンドルの運転席側には、明らかに本職の方にしか見えない厳つい男の人が、後部座席のドアを開けて立っていた。
「話が終わるまで、イイ子にしてろよ?」
待っていてくれる男の人には聞こえないように、耳元で囁く魁さん。
くすぐったくて思わず身を捩る私を、面白そうに目を細めた魁さんは、車内へと促すと静かにドアを閉めた。
その場で男の人と一言、二言、言葉を交わして葵さん達の元に行く魁さんの後姿を目で追っていると、コンコンと窓をノックされる。
魁さんに向けていた視線を移せば、そこにいたのは田中さんで。
どうしようか迷ったけれど、取り敢えずパワーウィンドウのスイッチを押して窓を開けた。
──…窓開けちゃったけど…この後、どうしたらいいの?
魁さんのさっきの設定から、私は話さない方がいいんだよね?


