蓮さんが私を見たまま動かなくなっちゃうから、私も視線を逸らす事が出来なくてジッとしていれば
「──…マリアに近付くな」
後ろから聞こえてきた低~い声とともに、真っ暗になった視界。
一瞬、自分の目がおかしくなったのかと思ったけれど……
肌に当たる感触で、手で目を覆われているのだと気づく。
ぽすんと何かが背中に触れた瞬間、ふわりと香ってきたのはフレッシュなシトラス。
「お前は近付き過ぎなんだよ、蓮」
「…っ…いってぇ──っ!!! 何すんだよ、葵!」
前方から、蓮さんの行動を窘める葵さんの声と「ゴツッ!」という鈍い音の後に聞こえてきた蓮さんの声。
真っ暗な視界から離れていった手を、ボーっと見送って次に映ったのは言い合う二人だった。
「お前…あの顔見て、まだ同じ事言えるのか?」
「…………」
殴られたであろう蓮さんは、葵さんの言葉で私の頭上に視線を向けると、顔面蒼白になって無言で離れていく。


