「落し物ですか? じゃあ、交番がすぐそこなので一緒に来てくれる?」
優しそうなお巡りさんに連れられて、近くにあった交番に入って行った。
「じゃあ、そこに座ってね」
言われたパイプ椅子に腰を掛けると、ギシリと音が鳴った。
何かの書類を机から取り出して、記入していく目の前のお巡りさん。
「じゃあ、落とした携帯の特徴を教えてくれる?」
にっこりと笑って聞いてきたけれど……
何の特徴もない携帯を、どう説明したらいいの?
何て言ったらいいのかわからなかった私を見て
「携帯の色は?」
詳しく聞いてくれた。
「……黒です」
「どこの携帯会社かな?」
「…………」
携帯会社?
昨日、兄さんに渡されたばかりの携帯だから知るわけもなく……
「渡されたばかりなので、会社までは覚えていません」
「そっか。じゃあ、ストラップとか付けてた?」
「いえ、何も付けていません」
ちょっと困った顔をしたお巡りさんは
「携帯が届いているか問い合わせてみるから、その間にこの書類に記入しててくれるかな?」
自分の手元にあった書類とボールペンを私の目の前に差し出した。