Wonderful DaysⅠ





駅前の通りとは違って、一本奥の通りはかなり交通量の減った道だった。

平日だし、既に夜の9時を過ぎているから人も疎ら。

あれから歩き始めた私達は、ある場所に向かって進んでいた。


二人に会話は無く、辺りには再び沈黙が訪れていた。

聞こえるのは、通り過ぎて行く車のエンジン音。

それがなくなれば、二人分の靴音が響き渡るだけ。

でも、気まずいと思わなかったのは、握られた優しい手の温もりがあったからかもしれない。


私達が今、向かっているのは今夜宿泊するホテル。

お金も無くて、家に帰れない私の為に魁さんが部屋を取ってくれた。


慧さんと連絡を取って、アル兄さんに助けてもらおうと思ったんだけど……


「…慧の奴、電話に出ねぇ。さっき話した時には違う場所に移動してて、今何処にいるのかわからねぇんだ」


話をする以前に、電話に出てくれない慧さん。

思わず「電話に出ろよ!」と、心の中で突っ込みを入れてしまった……