Wonderful DaysⅠ



「───来たか」


頭上から聞こえた声に視線を上げれば、魁さんがヴィクトルさんを見据えていたようで。

来たって、後を追い掛けて来たって事?


「走るから、口閉じてろ」


それまでゆっくりと一段ずつ下りていたのに、その声を合図に一気に駆け下り始めた。


ひぃ───っ! 落ちる───っ!!!


魁さんに抱えられて前屈みになっている私には、その景色が怖過ぎた。

ある意味、遊園地のジェットコースターよりも怖い。

そんな私を抱えているとは思えないスピードで走り抜けて行く魁さんは、階段を下り終えるとさっきの改札を通って奥の方へと進んで行く。


“逃げなくても大丈夫”って言いたいのに…

今、口を開いたら絶対に舌を噛む自信があるから口を噤んでいた。

そのまま暫く進んでいた魁さんは、急に右折して足を止めると私を下ろして狭い窪んだ所に身を潜める。