Wonderful DaysⅠ



その声無き呟きに、どくりと鼓動が反応した。

魁さんの真っ直ぐな視線に、どんどん顔が熱くなってくるのがわかる。

きっと、メイクしていなければ私の顔は真っ赤に染まっているに違いない。


───あれ…何で?


自分の顔に手を当てて確認してしまう。

今の私は完璧なメイクをされていて、誰だかわからない筈だよね?

魁さんが私とわかった事に首を傾げてしまう。

だって私ですら、鏡に映った自分が信じられなかったのに。

メイクを頼んだ慧さんだって、私の変身した姿に一応、確認したぐらいだし。


魁さんが放っていた空気が一変した事に気がついたのか、魁さんの視線を追って慧さんも私を見ると、にっこりと微笑んで魁さんの耳元で何かを囁いている。


「ねぇ、あの人こっち見てるよ~」


「ほんとだ…やっぱり凄く格好いい~!」


隣で話している声は聞こえてくるけれど、私の視線は魁さんから逸らす事が出来なくて……


何を言われたのか、慧さんの顔を一瞥して二言、三言会話を交わすと、歩き出した魁さんは緩やかな階段の真ん中を上って来た。