その声無き呟きに、どくりと鼓動が反応した。
魁さんの真っ直ぐな視線に、どんどん顔が熱くなってくるのがわかる。
きっと、メイクしていなければ私の顔は真っ赤に染まっているに違いない。
───あれ…何で?
自分の顔に手を当てて確認してしまう。
今の私は完璧なメイクをされていて、誰だかわからない筈だよね?
魁さんが私とわかった事に首を傾げてしまう。
だって私ですら、鏡に映った自分が信じられなかったのに。
メイクを頼んだ慧さんだって、私の変身した姿に一応、確認したぐらいだし。
魁さんが放っていた空気が一変した事に気がついたのか、魁さんの視線を追って慧さんも私を見ると、にっこりと微笑んで魁さんの耳元で何かを囁いている。
「ねぇ、あの人こっち見てるよ~」
「ほんとだ…やっぱり凄く格好いい~!」
隣で話している声は聞こえてくるけれど、私の視線は魁さんから逸らす事が出来なくて……
何を言われたのか、慧さんの顔を一瞥して二言、三言会話を交わすと、歩き出した魁さんは緩やかな階段の真ん中を上って来た。


