「やっぱり、格好いいね~」
「声掛けたいけど、あれじゃ無理だね」
「あの人、超好みなんだけどなぁ」
隣から聞こえてくる残念そうな声にちらりと視線を向ければ、女性達は間違いなく魁さん達に熱視線を送っていた。
ラウンジを見渡せば、ロビーから続く吹き抜けに大きな窓と壁画。
そんな開放感溢れるラウンジの階段近くに置かれたグランドピアノのすぐ隣で、慧さんを威圧している魁さん。
二人の険悪な雰囲気に、ラウンジ中にいる人達の視線が向けられていた。
───流石に、あの中に入って行くのは勇気が要るよね……
とにかく、慧さんの所に行かなくてはいけないのに足が動かない。
そろそろアル兄さんも来る頃だと思うから、もうちょっと此処で様子を見てみる?
でも、慧さんを心配させるわけにもいかないし……
なかなか踏み出せない足を動かそうと、やっとの思いで一歩前に出た時、今まで慧さんを睨み付けていた魁さんの視線が不意にこっちを向いて、ばっちり目が合ってしまった。


