「もう、大丈夫です」


店長さんに笑顔で答えてハッとする。


───大丈夫じゃないじゃん!!


まだ、ホテルまで慧さんの車に乗らなくちゃいけないんだった。


後、どれくらい乗らなければいけないんだろう……


そう思ったら、さっきの車の振動の感覚が戻ってきて思わず口に手を当てる。


───車の中で吐くのだけは嫌だな。


「お嬢様?」


足を止めて顔を顰めてしまった私を心配そうに見ていた店長さんに、もう一度笑顔を向けて


「……あ、なんでもないです」


扉に向かって足を進める。


「お隣の部屋で、結城様がお待ちですよ」


その言葉に頷いて、ノブに手を掛けた店長さんが開けてくれた扉を潜った。