「全く。そんな生意気な口を利いてると、魁君の大事なお姫様に会えなくなるぞ~?」


『どういう事だ、慧』


普段なら何を言っても相手にしないくせに、お姫様が絡むとムキになる。


───どうでもいいけど、お兄様って呼びなさいよ。


もう少し魁君で遊びたかったけど、これ以上怒らせたら後が面倒臭いから


「今ね、学校帰りに捕まえた魁君のお姫様を本来の姿に戻してるんだよね~。
早く来ないと、お兄様が連れ去っちゃうよ?」


『おい、ちょっと待てっ!!!』


「場所は、シェラトンだから。じゃ~ね~!」


慌てる魁君を無視して通話を終了させた。

目の前にあるコーヒーに手を伸ばして、一口含むと香ばしい香りが鼻から抜ける。

「ふぅ……」と一息吐くと、これから起こるであろう出来事に堪え切れず口角が上がってしまう。


「魁君の反応が、超楽しみだな~♪」


ワクワクを抑えながら、お姫様の支度が整うのを待っていた。