「え? あのっ……!」


未だに俺と此処に来た理由がわからないのか、困惑顔の彼女に


「ほら、早く行かないと。お兄さんと食事の時間に間に合わなくなっちゃうよ?」


言葉で促せば、たじろぎながらも店長に案内されて奥の部屋に消えて行った。


此処は県内でもトップクラスの実力を誇る、トータルビューティーサロン。

此処で彼女が変身している間に、待合室のソファーに腰を下ろして胸ポケットからスマホを取り出す。

タイミングを見計らって置かれたコーヒーの香りを楽しみながら、連絡先を開いて目当ての相手を選び出す。

無機質な呼び出し音が聞こえて耳に当てれば


『───…何だ』


ものの数秒で電話口に出た相手は、とても年下とは思えない応対で。


「やっほー、魁君。元気?」


『あ?』


生意気な口を利いているけど、可愛い弟だ。