(side:慧)


「「「「「いらっしゃいませ」」」」」


自動ドアを潜り抜けて店内に足を踏み入れれば、店員の揃った声で出迎えられた。


「お待ちしておりました、結城様。いつも、ご贔屓ありがとうございます」


この店の店長が一歩前に出て、にこりと笑みを向けてくる。


「結城……?」


俺の苗字を聞くと、隣で大きな瞳をぱちくりさせた彼女。

それには答えずに笑みだけ向けてから、店長の女性に注文をつける。


「彼女を、本来の姿に戻してもらいたいんだけど。出来る?」


俺の簡単な注文に、彼女をジッと観察する事、数秒間。

彼女から俺に視線を移した店長は、了承の笑みを浮かべる。

傍から聞いたら何の事かわからないだろうが、店長である女性には伝わったようだ。


「じゃあ、頼むよ」


「はい、お任せ下さいませ。では、お嬢様はこちらへどうぞ」


俺の声に頷いた店長は、彼女を部屋の奥へ促すように背中に手を添える。