結城でも、お兄さんとあんな感情的な会話出来るんだ。なんて感心していれば


「で、慧さんは何だって?」


蓮が結城に近付いて尋ねる。


「───チッ……」


それには答えずに舌打ちをすると、バイクに掛けてあったヘルメットに手を伸ばした結城。


「魁!」


もう一度、名前を呼んだ蓮に視線を向けた結城は、耳を疑うような言葉を発した。


「マリアが、慧に連れて行かれた」


「「は?」」


思わず蓮と声が被ってしまったけど、今はそんな事を気にしている場合じゃない。


「ちょっと! マリアがあんたのお兄さんに連れて行かれたって、どういう事!?」


マリアが関わっているなら、黙っていられない。


「学校帰りに拉致られた」


私の言葉に答えると、手にしていたヘルメットを被った結城。


「おい、魁!」


「絶ってぇ、連れ戻す。」


蓮の呼ぶ声に短く答えた結城は、ハンドルのグリップを回すと凄い勢いで走り去ってしまった。


「ちょっと、蓮。詳しく話を聞かせてもらえるかしら?」


その場に残った蓮に詰め寄れば


「俺が知るかっ! こっちが聞きてぇよ……」


本当に事情を知らないらしい蓮に、これ以上問い詰めても無駄だと悟った。