相変わらず崩れないポーカーフェイスは、恐ろしいほど整っていて同じ人間には見えない。
「───蓮」
蓮の名前を呼んだ結城に、私まで集中してしまう。
だから、結城の口から出た名前に思考が止まってしまった。
「マリアを見なかったか」
「あ?」
───今、マリアって言わなかった?
何で、結城の口からもマリアの名前が出てくるの?
「いや、見てねぇけど……おい、綾。周防マリアは、まだ学校にいるのか?」
蓮に名前を呼ばれて、我に返る。
「え……マリアなら、もう帰ったけど」
「───…チッ」
私の言葉を聞いて舌打ちをした結城は、いつものポーカーフェースを少し崩して眉間に皺を寄せていた。
「ちょっと! 何で蓮も結城も、マリアを知っているのよ!?」
少し大きくなった声に、初めて目の前の結城の双眸が私の姿を捉えた。


