Wonderful DaysⅠ



相変わらず崩れないポーカーフェイスは、恐ろしいほど整っていて同じ人間には見えない。


「───蓮」


蓮の名前を呼んだ結城に、私まで集中してしまう。

だから、結城の口から出た名前に思考が止まってしまった。


「マリアを見なかったか」


「あ?」


───今、マリアって言わなかった?


何で、結城の口からもマリアの名前が出てくるの?


「いや、見てねぇけど……おい、綾。周防マリアは、まだ学校にいるのか?」


蓮に名前を呼ばれて、我に返る。


「え……マリアなら、もう帰ったけど」


「───…チッ」


私の言葉を聞いて舌打ちをした結城は、いつものポーカーフェースを少し崩して眉間に皺を寄せていた。


「ちょっと! 何で蓮も結城も、マリアを知っているのよ!?」


少し大きくなった声に、初めて目の前の結城の双眸が私の姿を捉えた。