「いい度胸してんじゃねぇか。」


指をバキバキ鳴らしながら近付いて来る蓮さんは、やる気満々で蟀谷(こめかみ)には血管が浮き出ていた。


───これは、相当、怒っていらっしゃる……


自分の寝起きの悪さで、先に手を出しちゃっているから、反抗は出来ないけど……


───顔を殴るのだけは勘弁して下さいっ!


「この、クソおん…な……?」


再び、私の胸倉を掴んで怒鳴ろうとした声は、何故か尻窄みになっていく。

蓮さんの雷が落ちると思っていた私。

恐る恐る様子を伺えば……

そこには、目と口を最大限に見開いて、私の顔を凝視している蓮さんがいた。


───何? 私の顔に何かついてるの?


蓮さんの目線からいって涎じゃなさそう……

私とバッチリ視線が合っているから、考えられるとすれば……まさか、目ヤニとかっ!?

固まっている蓮さんから、そっと視線を外して斜めに動かせば……

そこでも固まって、こっちを見ている魁さんと葵さんが視界に映った。