「時間切れだな……」


「え?」


「忘れるなよ? 高校を卒業したら迎えに行く。」


私の手を包み込んでいた両手にグッと力を込めると、額に触れた柔らかい感触。

ちゅっと音をさせて離れたところで、おでこにキスをされたんだと認識する。


「うわっ」


きっと今の私の顔は茹蛸のように真っ赤に違いない……

私の反応に、満面の笑みを浮かべた男の子は「じゃあな」と走り去ってしまった。


───まだ、名前ちゃんと聞いてない……


その数秒後、私の前に辿り着いたアル兄さんに何度も名前を呼ばれた気もするけれど、今の私にはそれに答える余裕も無く。

おでこに手を当てれば、さっき触れられた所が未だに熱を帯びている気がした───

その後は、アル兄さん、マーク兄さんと一緒に自宅に戻ると、直ぐに自分の部屋に直行して、男の子に渡されたそれをジッと眺めた。

キラキラと輝くチェーンの先につけられていたのは指輪。

男の子は、首に下げていた指輪を私にくれたのだった。


───本物じゃないよね?


キラキラと眩い光を発している指輪だけど、まさか本物を小学生の子供が持っているとも思えず、取り敢えずは約束の証なのだと思った私は指輪を握り締めた。


──この日から、私にとって「ゆう」君は特別な人になった。