突然叫んだ私にびっくりした男の子は、目を大きく開いて私を見ていた。
「私、ハーフだもん。6年生になるまで日本に住んでたんだから日本語が話せて当たり前なの」
段々と尻窄みになる私の言葉を聞いていた男の子は、一歩近付くと困った顔をして
「───悪かった」
そう言って私の頬に触れると、スッと親指を滑らせて、頬に伝う涙を拭う。
───私、泣いてるの?
拭われた指を見れば、確かに指先が濡れているのが見えた。
「もう言わないから、泣くな。」
頭をポンポンされて、止まる筈だった涙は止め処なく溢れ出す。
きっと、久しぶりに聞いた日本語と、目の前の男の子の優しい声にホッとしたんだ。
ぽろぽろと零れていく涙で視界は滲み、男の子の顔なんてぼやけて見えなかったけど、一向に泣き止まない私に、きっと困っていたに違いない。