魁さんの腰に腕を回してしがみつく私。

頬を突くような凍てつく寒さを遮るように、魁さんの背中に顔を埋める。

走る速度が早過ぎて、周りの景色を見る事もままならない。


───魁さんっ!お願いですから、もっとゆっくり走ってくださいぃぃっ!!!


心の中で叫んでいれば、徐々に減速し始めた魁さん。
ふと顔を上げれば、修さんの家が瞳に映る。

見慣れた景色にホッと安堵の溜め息を吐いた。


「魁さん、ありがとうございました!」


バイクのエンジンを切って、同じように降ろしてくれた魁さんにお礼を言えば


「だから、一人で出歩くなって言ったろ」


いつか受けた忠告が頭の中に蘇った。

だけど、今日は学校帰りで不可抗力なんですけど……


「──…っく……」


余程、複雑な表情を見せていたのか。

魁さんが肩を震わせて笑っている……のか?
ポーカーフェイスが崩れないから、よくわからない……