その緊張感のない声に、皆が振り返る。
集団の中からは「総長!」と言う声が聞こえてきて、今まで殴り合いをしていた男達はその手を止めた。
「──白石……」
こっちを見て呟いたイケメンさんも、集団の中心にいたカイさんも動きを止める。
それに気を良くしたのか、私の背後にいる白石と呼ばれた男は
「動くんじゃねぇよ? もし動いたらこの女がどうなっても知らねぇぞ」
勝ち誇ったかのように鼻で笑った。
「てめぇ……」
白石を睨みつけるイケメンさんと、そのはるか後ろからもっと凄い眼力で睨みを利かせるカイさん。
イケメンさんも怖いんだけど……
───カイさん、怖っ!! 怖いよーっ!!
まるで私が睨まれている様な錯覚を起こす。
それにしても……
「あ、あのー、何で彼らが動いたら私がどうにかなっちゃうんでしょうか?」
後ろが見えないから、前を向いたまま白石に話し掛ければ
「あ? お前がカイの女だからに決まってんだろうが」
「……………………」
──ん? 誰が誰の女だって?


