「……付き合って、ないよ。」
ずっと黙っているわけにもいかず、私は事実を答えた。
言った瞬間、私の目の前で、線香花火の赤い玉が落ちる様子が見えた。
私も春瀬くんも、花火に火をつけてはいないから、それはどう考えてもイメージというか、幻でしかないのだけれど。
鮮明に見えたのだ。
ぽとり、と、光が静かに地に吸い込まれたのが。
「…永山くんが宣言したのは、嘘だよ。嘘を言って、私を助けてくれたの。」
「助けるって…何かあったの?」
「ううん、大したことじゃないんだけど…」
まさか春瀬くん絡みのトラブルがあったとは言えず、私は言葉を濁す。
「…とにかく、私のために嘘をついてくれただけなの。」
「…そっか…そっかぁ……」
春瀬くんはうんうんと頷きながら、私の言葉をひとつひとつ受け取っているようだった。
そうして、思い出したかのように、私と彼の線香花火に火をつける。
光の玉が、あのお祭りの日のちょうちんのように膨らみ、パチパチと小さな光が弾ける。
蕾。
牡丹。
松葉。
散り菊。
線香花火は次々と表情を変え、そして最後には静かに光を手放し、命を終える。
「あ、終わっちゃった…」
そう言って、隣を見た瞬間。
視界が暗くなり、唇に柔らかいものが触れた。
私の唇は、春瀬くんの唇にふさがれていた。

