オクターブ ~縮まるキョリ~



私がひとり感傷に浸っている間、春瀬くんはコンビニ袋から花火を取り出し、ケータイのバックライトを頼りに説明書きを読んでいた。


「これが6色に変わるやつでー、これがなんかキラキラするやつみたい。線香花火はやっぱりシメだよな。」

「すごい、意外と種類あるね。」

「おー、あとのやつは、なんか違いがよく分かんないけど…好きなの選んで。」

「じゃあ、これにしようかな。」


私はそう言って、色が変わるという花火を一本手に取った。
春瀬くんはコンビニ袋から花火用の着火ライターを取り出して、花火の先端に火をつけてくれる。


「……わぁーー…」


花火の先から緑色の炎が噴き出し、辺りを明るく照らす。
シャーっという軽い音と、焦げる香り。
緑色は白に変わり、私の春瀬くんの姿を煌々と照らす。


久しぶりの花火にわくわくしていると、春瀬くんがすっと隣にやってくる。
そして手にした花火の先端を、私が持つ明かりに触れさせる。
花火同士の先端が触れ合った瞬間、私の巣刊はドキリと大きく動いた。
花火がぶつかった瞬間が手に伝わってきて、まるでは春瀬くんと触れ合っているような錯覚を起こしたのだ。
たとえるなら、指と指を触れ合わせてコミュニケーションを取る、映画でみた宇宙人のような。


私がそんなことでドキドキしているとも知らずに、春瀬くんは花火に火がつくのをじっと待っている。


「お、ついた。」


シャーっと光が噴き出すのを見て、春瀬くんは私から距離を取る。


「夏だーー!!」


言いながら春瀬くんは砂場に向けてぶんぶんと花火を振り回す。


「楽しいな、花火!!」


春瀬くんはそう言って、首だけでこちらを振り返り、ニッと笑ってくれる。


「…うん!」


嬉しくなって、私もやはり笑顔になる。