オクターブ ~縮まるキョリ~



公園には、人の姿は無かった。
砂場とブランコしかない、ごく小さな公園。
小学生のときは、友達とよく遊びに来ていたっけ。
こんな狭い空間でも、友達と来ればそこはたちまち豪華なお城になり、大海原にもなったものだ。

ブランコ、こんなに低かったっけ。
そう思いながら、ブランコの鎖にを握ってみた。
顔を近づけてみると、遊具独特の懐かしい鉄の匂いがした。


公園の奥のフェンスの向こうには、線路が見える。
ブランコをこいでいる途中でも、電車が近づくとぱっと飛び降り、みんなで手を振ったりしたものだった。
どう考えても、位置的に向こうからこちらは見えないのに、私たちは一生懸命に手を振った。
誰にも見てもらえなくても、「誰かに手を振る」という行為そのものが、私たちの目的だったように思う。
もちろん、昔はそんなややこしいことは考えていなかったけれど。