オクターブ ~縮まるキョリ~



春瀬くんの問いに、一瞬ドキリとする。


「あ、えーっと、ちょっと用事があって……」

「ふーん、そうだったんだ。」


そう。
実は先週、クラスのみんなで集まって花火をやろうということになっていた。
私がそれに行かなかったのは、本当は用事があったからではない。
お祭りの日に、私を神社の裏へ呼び出した、あの3人組。
彼女たちが来ると聞いて、どうも気が引けたのだ。


私はあの日のことを思い出して、少し憂鬱な気分になる。
運良く永山くんに助けてもらったとはいえ、あんな風に女の子たちに責められたのは、やはりショックな出来事だった。


誘蛾灯がバチンと弾ける音がする。
チョコレート味のアイスが、喉をすっと冷やしていく。


「ま、夏休みなんだし用事くらいあるよな。」

「……うん。」


私はそう言いながらうつむく。
自分の足元を見て、ピンクのペディキュアが少しはげていることに気が付いた。