オクターブ ~縮まるキョリ~



パキっと軽快な音を鳴らして、春瀬くんはアイスを2つに割った。


「はい、どーぞ。」

「ありがとう、いただきます。」


私はそれを受け取り、春瀬くんがそうしたように、駐車場のわきのブロック塀に腰を下ろした。
夜になっても空気はじっとりと湿っぽく、肌にベタベタがまとわりつく。
それも、アイスに口をつければ、夏の醍醐味と感じられた。


「もう課題終わった?」


アイスを吸いながら、春瀬くんが尋ねてくる。
学校で隣の席に居る男の子が、私の地元でも隣に座っている。
教室で居るよりも少し近い距離に、私はなんだか特別な印象を受けた。


無地のポロシャツに、チェック柄のハーフパンツ。
つっかけてきただけのビーチサンダルが、「プライベート」という雰囲気を醸し出していて、私はなんとなく春瀬くんの新しい一面を見た気がした。


「まだ少ししか終わってないよ…春瀬くんは?」

「俺もまだ全然!先生たちもさぁ、課題出しすぎだよなー。」


そう言って春瀬くんはため息をついてみせた。


「あ、そういえば樫原さ、何でこないだ花火来なかったの?」