オクターブ ~縮まるキョリ~



「はい、皆さんお早うございます。席について下さい」


先生が教卓の前に立つと、みんなそれぞれ自分の席へと戻った。


あんな先生、うちの高校に居たんだ。
背が高くてヒョロっとしていて、なんとなく気の弱そうな男の先生。
古めかしいデザインの眼鏡が、ストレートにダサい。
歳は三十代後半くらいだろうか。
結婚は…まだ、してないだろうな。


「えー、二年C組の担任をすることになりました、花井です。よろしくお願いします。
皆さんの自己紹介は後でするとして、まずは始業式があるので、ホールへ向かって下さい。」


そう言ってドアの方を示す、花井先生のガイコツみたいな左手。
よく見ると薬指には指輪が光っていた。

先生、意外と既婚者だったんだ…。



先生の指示の通り、みんなガタガタと席を立って廊下に出る。
既に何組かの友達グループが出来ていて、私は少しだけ不安な気持ちになった。
もしかして、友達作りに出遅れちゃったのかな…。

と思ったところで、その友達グループが部活の話をしていることに気が付いた。
恐らくあの子達は、一年生の頃からの部活仲間なのだろう。

どこの部活にも所属していない私は、それが少し羨ましく思えた。
私も何か部活に入っていたら、他のクラスに友達が出来ていてのだろうか。


ま、今更か。


私は「一人」で居ることがバレないように、適当な女子集団の後ろを付いていった。
「バレないように」…って、高二にもなって何を気にしてるんだろうと、少し情けなくもなるけど。