がくねんか、と呟いた瞬間、私はぞわっと鳥肌が立つのを感じた。
この暑さに関らず、だ。
けして、学年歌なるものに寒気を覚えたわけではない。
思い出したのだ。
あの感動を。
「明日から夏休みですが、みなさん課題も忘れずにきちっとやるように。
特に、学年歌は先生たちも楽しみにしていますから。
それでは、これで解散にします。
みなさん、また二学期に元気で会いましょう。」
花井先生がさらっと言いのけて、みんなが席を立つ。
私はまだ、プリントの「学年歌」の文字をじっと見つめていた。
学年歌は、ここ東城高校の伝統のひとつだ。
冬、全校生徒の前で高校二年生が合唱を披露する。
それが、毎年の恒例行事となっている。
合唱とはいえ、既存の歌を歌うのではない。
作詞も作曲も高二の生徒が手掛けた、完全にオリジナルの歌を歌うのだ。
入学したときにも、この伝統について聞かされた。
そのときは「面倒くさそう」という印象しか受けなかったが、実際にそれを聴いて、肌で感じて、私は過去の自分を恥じた。
高校二年生が、こんなにも完成度の高い歌を作ることができるだなんて。
それに、こんなにも心に迫る歌を聴かせることができるだなんて。
私はあの冬、とにかく言いようのない興奮と感動を覚えた。
そして、憧れを抱いた。
自分もあんな風になれるのか、と。

