勢いよく教室のドアを開け、中に一歩踏み入れたところでチャイムが鳴った。


「ま、間に合った…!」


私は肩で息をしながら、自分の席へと向かう。
明日から夏休みということもあってか、教室はいつも以上に騒がしい。


「っす」

「あ、おはよう」


席につくと、一番に永山くんが声をかけてくれた。


「樫原が遅刻ギリギリなんて、珍しいな」

「うん、ちょっと寝坊しちゃって」

「ふーん。夜更かし?」

「ま、まぁ、そんなところかな」


答えながら、私は髪を整える。
走ってきたせいで、ボサボサになっていやしないだろうか。
否、そもそも今朝はきちんとセットする余裕も無かったのだけれど。


そして、私は夜更かしの原因となった彼をちらりと見る。


彼…春瀬くんは、友達に囲まれて楽しそうに笑っていた。