オクターブ ~縮まるキョリ~



「それより、痛かったでしょ。女子を狙ってボール投げるとかありえねーよ」


あのバカ、と春瀬くんは付け加える。
きっと、私の方向にボールを投げた男子のことを言っているのだろう。


「ううん、私がゲーム中なのにボーっとしてたから悪いんだよ」

「いやいや、ていうか俺がドッヂを提案したのが悪かったな。ごめん!」


パンっと両手を合わせて、春瀬くんは私に謝る仕草をする。
確かにドッヂは好きじゃないけど、春瀬くんが謝ることではないのに。
だって、本当に、春瀬くんに見とれてぼんやりしていた私が悪いんだから。


「いいよ、本当に…ていうか、春瀬くん、血ついてる!」


話しながら起き上がると、春瀬くんのTシャツの血がついているのが目に入った。


「ごめん!それ、私の鼻血だよね!?というか私…」



というか私、春瀬くんに鼻、おさえられてたよね…



思い出して急に恥ずかしくなってきた。


「…は、春瀬くん、そのTシャツ、うちで洗って返すから!」

「えー?そんなん、全然気にしなくていいよ?」

「だめだめ!私の気が収まらないから!」



春瀬くんの手。

高い体温。


感触が思い出されて、焦った私は春瀬くんに強引にくらいつく。