オクターブ ~縮まるキョリ~




「…………」


「………ん…」



誰かに呼ばれたような気がして、まぶたを持ち上げる。
見慣れない、白い天井が視界に入った。
そのまま目だけを動かして、ここが保健室であることと、自分がソファに寝ていたことを把握した。


「あ、起きた?」


近くから声が聞こえたので、反射的に首を持ち上げようとすると、ズキンと頭が痛んだ。


「…っつ……」

「そのまま寝てなよ」


声のする方向を見やると、その声の主は、ソファのすぐ脇のパイプ椅子に座っていた。


「春瀬くん……」


私はその彼の名前を口にする。


「大丈夫?もう少し休んどきなよ」

「うん、ありがとう…あの、もしかして、ここまで運んでくれたの?」

「もしかしなくても、そうだよ」

「わっ…ごめん、私、重かったでしょ」

「全然?俺、筋トレしてるし、女の子ひとりくらい楽勝」


春瀬くんはそう言って、力こぶを作ってみせる。