「そっかー、詩帆と別れちゃうの寂しいなー…
でも詩帆なら誰とでも仲良くなれるし、すぐに新しい友達もできるよ!」
私もC組に遊びに行くからさ、と香織は付け足してくれた。
けれど、私の心はあまり晴れてくれなかった。
香織は「誰とでも仲良くなれる」とポジティブに言ってくれたが、私は単に「自分」が無いだけ。
特に意見も無くて、なんとなく周りに流されて、可もなく不可もなく、地味に佇んで。
そんなつまらない私が、自分から友達を作りにいけるのか?
香織なしで、高校生活をこなせるのか?
不安は増すばかりだった。
少し重めの溜め息をつくと、香織はポンポンと肩を叩いてくれた。
「ま、心配ばっかしても仕方ないって!んで、私のクラスは、と……」
香織は掲示板を指でなぞりながら、自分の名前を探し始めた。
上から下へ、指と目線が同じスピードで動く。
そしてすぐに、あっと声をあげてその指を止めた。
香織はどこのクラスだったのかな、と思っていると、フフフという不気味な笑い声が耳に入った。
「えっ、何よその笑い…香織どうかしたの?」
不気味な笑い声は、確実に香織の口から発せられていた。
香織はこちらをゆっくりと振り向くと、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。