オクターブ ~縮まるキョリ~



「永山くんは、ここでバイトしてるんだ?」


永山くんのエプロンの胸元には、このCDショップの店名が刺繍されていた。
蛍光色の筆記体の文字が、黒地のエプロンによく映える。


「ああ。週3で入ってる」

「そっか、忙しいんだね」

「まぁな…で、何か用があったんじゃないのか?」


そう言われて、私は自分がどういうヘルプを求めていたのかを思い出す。


「そうそう、ちょっと欲しいCDが届かなくて…」


私は言いながら自分がもと居た棚の場所を指さす。


「あの、ちょっと浮き上がってるショパンのやつなんだけど…」

「これか?」


永山くんはそう言って、私が指さした先のCDをひょいと棚から取り出した。
私にとっては届かない場所でも、背の高い永山くんにとっては軽々と手が届く場所だった。


「はい」

「あ、ありがとう」


私は永山くんからCDを受け取ってお礼を言う。
CDのジャケットを見ると、こちらをじっと見ている演奏者と目が合った。