明日歌が指差したのは、私のバッグについていた、うさぷにちゃんのキーホルダーだった。


「それ、うさぷにちゃんだよね?みせて!」


明日歌の口から「うさぷにちゃん」という言葉が出たのが不思議だった。
全く別の世界のお姫様が、私みたいな庶民向けのキャラクターのことを知っているだなんて。
うさぷにちゃんのキーホルダーをしげしげと眺める明日歌は、本当に可愛いの一言だった。

そんなことがあってから、私と明日歌は仲良くなった。
レッスンがある日は、少し早めに先生の家に行って。
明日歌のレッスンが終わるのを、部屋のソファに座って待って。
「あすかちゃんのレッスン、さいしょからみたい」とワガママを言ったこともあったかな。
あの時はさすがにお母さんも困ってたっけ。


そんなことを思い出していたら、ワッと拍手が沸き起こった。
春瀬一輝の自己紹介の番がきたのだ。

明日歌もちらりと春瀬一輝の方を向く。
大きく作った茶髪のサイドポニーで、明日歌の表情は見えなかった。