……あれから、どうやって家に帰ったのか、よく覚えてない。
気が付いたときには私はベッドに倒れこみお気に入りのクッションを抱きかかえていた。


「春瀬くん……」


彼の名前を口にすると、胸の奥から何か熱いものが湧き上がってくるようだった。


真剣な眼差し。

凛とした声。

そして、唇の感触。


そっと唇に指を触れてみると、まだそこは熱をもっているような気がした。


まさか突然、キスをされるなんて。
そして、あんな風に見つめられて、はっきりと「好き」と言われるだなんて。


あんな風にされて、ドキドキしないわけがない。
胸がときめかないわけがない。


私が春瀬くんに抱いていた感情は、ただの憧れだったはずだ。
でも、果たして今もそうだと断言できるだろうか。


「はぁ……」


一晩の内に色んなことが同時に起こり、私の脳は全てを処理しきれなくなっていた。


ぎゅっと目をつぶる。


眠れるわけもないのに。