「ああ、もうこんな時間か。そろそろ帰るよ。じゃ、またお邪魔するね瀬良木」
「うん。気を付けてね。」
ドアを開けると、激しい雨の音と雷の音がより大きくなった。

「凄い雨だな…」
腕に落ちた雨の雫は冷たかった。
ドアを閉めるとほぼ同時に母からメールがきた。

“今日は雷が凄いね
お母さん今日は帰りが遅くなるから
落雷には十分注意してね”

その後はゴロゴロ過ごした。
嫌な予感が現実になるような気がして。
なるべく何も考えないように…。


「♪〜♪〜♪」
「ん…」
いつの間にか寝てたようだ。
時計を見たら6時30分を指していた。
あまり時間は経っていない。
軽快なリズムの着信音を鳴らす携帯に手を伸ばし電話に出る。

相手は颯だった。

『大変だ!炎流。お前の事だから大丈夫だとは思うが落ち着いて聞いてくれ!』
「どうしたんだいきなり。そんなに急な話なのか?」
颯は焦りを帯びていた。
忘れていた嫌な予感が頭をよぎる。

『あの時の落雷、被害にあったのは俺らのクラスの女子なんだって。』
「…え?…嘘だろ?…誰かわかるか?」

『…その被害に遭った女子の中には………二宮が…。』
「………」



翌日は晴れだった。
あの落雷の被害に遭った女子の人数は3人。
その中に奈々が…。
優の彼女であった女子も被害に遭っていた。
あの落雷は…大切なものを奪っていった。

学校から連絡で今日は来なくていい、という事と、クラスの女子が落雷の被害に遭い、亡くなってしまったということが伝えられた。
いざ大切なものを失うと、悔いが残る。
あの時、一緒にいてあげれば…。

涙が頬を伝い、衣服を静かに濡らす。