5月の終わり。
この日はあいにくの雨だった。
朝からだんだん強くなる雨にこの学校の生徒達は早帰宅に期待を膨らませていた。

先生達は今日の帰宅時間について会議を開いていた。
始めからそんなつもりだったなら登校させるなと、教室の中から声があがる。
午後の予定について話し始める女子もいる。
気分はもうお休みムードだった。

「ねえ炎流、午後さ、暇?」
「え、えっと、午後は最近溜め込んでいるテレビ見ないと…」
「なーんだ、つまんなーい」

いきなり話しかけてきたのは幼馴染みの二宮奈々。(にのみやなな)
しつこく俺に付き纏ってくるから、何か俺に興味でももっているのか?なんて妄想してしまう。

「何だよ炎流、奈々のお願いも聞けないのか?奈々が可哀想だろ…?」

こちらの女子ヒイキ糞キモナルシストは花風優。(はなかぜゆう)
女子に構ってもらいたい様でいつも女子の側にいる。

「ごめんな二宮。瀬良木とはもう約束してたんだよね。」

親友の神崎颯。(かんざきはやて)
中学の頃に知り合った気の合う奴だ。

「いいよ。奈々今度だな。すまん。」
「気にしないで!じゃあさ、帰りは一緒じゃだめ?」

軽く謝罪すると帰りの同行を要求された。
「恋人でもないんだしさ、嫌d(ガラッ)

自分の発言とドアの音が重なり、最後の方まで伝わらなかった。
ドアの音を作った犯人は担任だった。

「朗報だ貴様らァ!期待通り帰宅命令が出たぞォ!さァさっさと教室から出ていけェ!」

教室中が歓喜の声と拍手で包まれた。
急に湧き上がった声に驚き椅子から転げ落ちたが、そんな姿はだれにも見られなかった。
顔が沸騰した様に赤くなる。

結局、奈々はクラスの女子と家路についたようだ。
何だったんださっきの会話は…。

雷の音が大きくなると共に、雨も勢いを増す。
俺はズブ濡れ覚悟で家まで走った。

その後家では颯とテレビゲームをして過ごした。久しぶりのま○おゲームは楽しかった。雨だがいい日だと感じた。

《ドッゴオォォオン》

『⁉』

地面が揺れたように感じた。
どうやら落雷のようだ。

聞いたことのないような音に俺と颯はただ呆然としていた。

「凄い落雷だったなあ…瀬良木」
「…」

なんとなく嫌な予感がした。
それは何なのか、その時はまだ分からなかった。
ただ、何か大切なものを失ったような…。